映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-

special

キャラクターデザイン・総作画監督
西屋太志インタビュー
幼すぎず、成長し過ぎず、
そのあいだというところを大事に描いています。

――西屋さんが魅力的だと思う「映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-」のポイントを語ってください!

今回描く中学生の時期特有の、思春期まっただ中にある「幼さ」と「成長」に尽きるかなと思います。

――中学生ならではの魅力というと?

精神的にも肉体的にもまだ完成しきっていない、危うい感じ…かなと思います。その成長過程を繊細に拾っていきたいですね。

――TVシリーズ(『Free!』、『Free!-Eternal Summer-』)と原作小説(『ハイ☆スピード!2』)の挿絵とでキャラクターデザインが一新されていますが、映画に向けたキャラクターデザインのこだわりはどこですか?

小説の時のデザインと方向性は同じですが、郁弥は少し変わりましたね。小説の時は遙と少し雰囲気が近いところもあったので、少し差別化を図る意味でも髪のボリュームやシルエットを変えました。小説『ハイ☆スピード!2』の挿絵の時は片目が隠れていたのですが、目はしっかり見せていこうという方向性になり、今回の『映画 ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』では髪から覗くような感じにしています。
ちょっと反抗的な目つきは郁弥の性格を象徴していると思うので、小説挿絵の時から引き継いでいます。

――キャラクターデザインを生み出すときの制作過程をぜひお聞きしたいです。

髪型はヘアカタログなども参考にしつつ考えることが多いです。旭は小説の描写を汲み取って髪をツンツンさせてみたり、キリっとした眉で活発な性格が出るようにしてみたり。旭は割とすんなり決まりましたね。
郁弥の初期案は今と全然違ったような……。一度ふわっとパーマがかかったような髪型を描いてみたのですが、「何か違うな」となって、結果的に今の形に落ち着きました。郁弥の変更点については一番は遙との差別化というところが大きいですが、今っぽさを取り入れつつ、特徴をつけていった感じですね。思春期特有のピリピリしたところのある男子というイメージです。
キャラクターの等身とバランスは一番悩みましたね。

――中学生感を出すにあたって、等身やバランスはどんな工夫をされたのでしょうか。

今回は小学生と高校生の間にあたる中学生ということで、身長や体格などをどれくらいの匙加減にするかは武本監督とも相談しました。ちゃんと中学生に見えるように描きたかったので、しっくりくるバランスを探して調整していきました。微妙なニュアンスをうまく出すのはなかなか難しかったです。

――遙たちの、制服に着られているようなところも一年生感が出ていて、初々しくてかわいいなと思います。

制服をブカブカにしたいというのは武本監督もおっしゃっていましたね。僕もその要素は入れたいなと思って取り入れつつ、でもかっこよさがなくなってしまうのは嫌だったので、ラインやシルエットなどに少しスマートさを出しています。学ランに着られてる感じはありますが、シュッとしているところもあるイメージです。

――遙、旭、郁弥の3人と真琴の「ブカブカ感」はちょっと違うように思いましたが?

真琴はこの時代から成長が早く背も高いので、真琴だけはそれなりに制服の丈が合っている設定で描いていますね。

――顔のバランスなどは?

小学生と高校生の間を取って、いいバランスになるようにと考えました。幼すぎず、成長し過ぎず、そのあいだというところを大事に描いています。

――幼さを出すためのテクニック面の工夫などはあるのでしょうか?

あまりそういう決まり事を考えて描いてはいないです。顔、体つき含めて全体的なバランスとして落ち着きが良いようにする感じでしょうか。結構感覚で描いているところが大きいですね。

TVシリーズから引き続き携わっているので、自分なりに彼らのことを分かって、動かしてあげられるつもりです。

――遙のデザインのバランスなどはどういったイメージで描かれましたか?

遙だけでなく真琴もそうなのですが、体つきを細めにして、まだ頼りない感じにしています。とはいえ水泳をやっているので、それなりに締まってはいる体型ですね。スラッとしたシルエットにしたいと思っています。メリハリは少ないけれど均整はとれている、というか。

――遙と真琴については、ハッキリとした違いというよりも微妙な匙加減で整えていった感じでしょうか。

『ハイ☆スピード!』の真琴は高校生の時よりも頼りなさげというか、遙に寄りかかっている部分が大きくてちょっと自信のない感じですよね。真琴に関しては内面の幼さも加味して描くようにしています。
遙は、幼さはあっても内面的にそこまで大きく変わらないですね。この時代から変わらず遙のままというか。トガっている部分が前面に出てきている感じはするかもしれませんが。芯が通っているところがあるので、やはりどの時代においても遙は遙ですね。
TVシリーズ『Free!』、『Free!-Eternal Summer-』から引き続き携わっているので、自分なりに彼らのことを分かって、動かしてあげられるつもりです。

旭はまさに少年!という感じですね。

――新しいメンバーのご紹介をお願いします! 【旭】のキャラクターデザインについてのこだわりはどこですか? お気に入りな所はありますか? 【旭】の魅力、西屋さんの好きなポイントは何ですか?

とにかく表情がころころ変わるので、そこをぜひ見てほしいなと思います。
旭はまさに少年!という感じですね。鼻の頭にちょっとタッチをつけて、赤らんでいる様子とか。

――タッチでも表現は工夫できるんですね。

わんぱくな雰囲気が出るかと思って。夏、太陽の下で元気に走り回っている男子という感じ。やんちゃで活発なキャラですね。年相応の少年っぽさを全面に押し出していきたいです!

郁弥は感情の振り幅が大きくて、態度がストレートに表に出ることが多いです。

――【郁弥】のキャラクターデザインについてのこだわりはどこですか? お気に入りな所はありますか? 【郁弥】の魅力、西屋さんの好きなポイントは何ですか?

態度はツンツンしているけど顔は可愛らしかったり、険しい顔を無理して作っているような感じがする所でしょうか。あとはつりあがった猫目ですね。

――猫目にはどんな思いを込めたのですか?

可愛らしさもあり、鋭さを秘めている感じを。武本監督からの要望もあって、目を印象的にしています。目力は大事です!郁弥には下睫毛も結構多めにつけています。
夏也と兄弟ということでどこを似せるか悩んだ結果、髪型や色は違いますが目の感じを似せています。

――郁弥は、わりと表情豊かにも思いますが。

郁弥は感情の振り幅が大きくて、態度がストレートに表に出ることが多いです。まっとうな反抗期、みたいな。

中学生の彼らが並んだ時の見栄えやバランスを考えていって、それらが色々ストンと定まった時はほっとしました。

――この作品で楽しみにしている事、描きたい1シーンなどはありますか?

遙たち4人の学校生活の描写や、彼らが徐々に関係を深めていく過程をみっちり描きたいなと思います。

――デザイン的にやりがいを感じた部分は?

中学生の彼らが並んだ時の見栄えやバランスを考えていって、それらが色々ストンと定まった時はほっとしました。
新キャラの中では、夏也のデザインが一番難航しましたね。最初は『Free!』の御子柴清十郎みたいな雰囲気の熱血系キャラとして描いていました。途中からそれとはまたベクトルの違う、爽やかさを前面に出しつつ傍から一目置かれるカリスマ性を兼ね備えたキャラを目指そう、ということになり、いろいろなパターンを描いた結果今の夏也になりました。
尚は個人的には結構描きやすいキャラですね。夏也と尚はセットでいることが多いので、二人が並んだ時に良いバランスになるようにと考えました。
この二人は3年生なので、遙たちと比べると大人ですよね。なので先輩らしさやある程度の落ち着きはちゃんと出したいなと思います。

――最後に、皆さんにメッセージをお願いします!

中学生の時期の体つきや繊細な心の動きなど、彼らの姿をとにかく魅力的に描きたいです!
彼らに寄り添いつつ、それぞれの持ち味を引き出してあげられる確信はあるので、映画公開を是非とも楽しみにお待ちいただければ!と思っています。

――ありがとうございました!